直木賞作家の山本一力さん原作「大川わたり」が9月5日から27日まで明治座で上演されます。生き生きとした江戸の庶民の生活とともにに人間の弱さ、強さ、醜さ、優しさを丹念に描いた、爽やかな感動作。深川に暮らす腕利きの大工で、ふとしたことから博打にはまり借金を負うという主役の「銀次」を演じるのが筒井道隆さん。
江守徹さん、風間杜夫さん、池上季実子さん、松村雄基さんなど実力派が揃った明治座初出演の舞台にかける想いや「銀次」を演じる上で苦労していること、自転車が趣味というプライベートや最近気になることについてお話しを伺いました。

明治座9月公演「大川わたり」
直木賞作家・山本一力の名作「大川わたり」が9月の明治座で舞台化。
二十両の借金を返すまで、大川を渡らない約束をした銀次。
彼を支える温かい人情と、陥れようとする嫉妬がぶつかった時、銀次は命がけの選択を迫られる。
原作:山本一力(祥伝社文庫刊)
脚本:水谷龍二
演出:江守 徹
出演:筒井道隆、池上季実子、松村雄基、渡辺 哲、荘田由紀、風間杜夫、江守 徹、他
9月5日(金)〜9月27日(土)
昼の部11:30、夜の部16:30
ご予約はこちらから
明治座チケットセンター
03−3660−3900

筒井道隆(ツツイミチタカ)
1971.3.31生まれ90年に映画「バタアシ金魚」で主役デビュー。日本アカデミー賞新人俳優賞、キネマ旬報新人男優賞を受賞して注目を浴びる。
その後、「或「小倉日記」伝」(TBS・93)「あすなろ白書」(CX・93)「かりん」(NHK・94) などテレビドラマに立て続けに出演。
現在は映画・テレビ・舞台など活躍の幅を広げている。
<その他の主な出演作>
「きらきらひかる」(92)、「洗濯機は俺にまかせろ」(99)「KT」(02)「ブレス・レス」(06)「悲しき天使」(06)
【ドラマ】
「王様のレストラン」(95)「私の青空」(00)「百年の恋」(03)「新選組!」(04)「Around40」(08)「ゴンゾウ」(08)
【舞台】
「昭和歌謡大全集」(97)「メランコリーベイビー」(00)「竜馬がゆく」(02)「十二人の優しい日本人」(06)「グッドラック、ハリウッド」(07)「ア・ラ・カルト」(07)
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―ただいま稽古の真っ最中ですが、舞台への意気込みについてお聞かせください
「頑張るぞ!」と気張って稽古するのではなく、本番で結果を出すことが大事だと考えています。オリンピックで金メダルを取るのもそうですが、過程よりも結果で評価される立場だと思うから気張らずにいきたいですね。過程はどうであろうと結果をきちんと出せばいいんだと思う反面、結果が出なかったらどうしようと怖くなることもあります。あまり複雑に考えすぎず、楽しく仕事をして良い結果を出せたらいいですね。
―どういう結果を思い描いていますか?
実はまだその基準がよく分かりません。自分が「すごくいい!」と思っても他の人に評価してもらえない時もあるでしょうし、その辺は客観的に見た上で駄目なところを修正して次に活かせればいいと思います。
―舞台の見所、特に女性の方に見て欲しいポイントなど教えてください
脚本がいいので男女問わない作品だと思います。女性だったら恋愛や人間模様に興味を持っていただけるのではないでしょうか。
最近感じるんですが、歳を重ねるにつれて実際に恋愛することが面倒に思えてきませんか?若い頃は何も考えずに恋愛の波に乗っていたけど、最近は波に乗るのが面倒というか、そこに時間と労力を使うよりは趣味とか違う事に時間を費やしたいと思うようになりました。そうしながら、うまく恋愛をしていく方法ってないんですかね。
―「銀次」を演じるに当たって、苦労されている点について教えてください
全部です(笑)。普段から着物の着付けなど習い事をしておくべきだったなと痛感しています。最初は所作のポイントが分からず苦労しましたが、毎日稽古する内に少しずつ分かってきて楽しくなってきたところです。
―舞台と映像とでは見られる角度が違いますよね
そうですね。でもそれを意識しすぎてしまっては駄目だと思うんです。見られることばかりを気にしていると気持ちが動かないし、そうかといって気持ちに重点を置きすぎると動きが雑になってしまいます。だからそのバランスを考えなくてはいけない。映像の世界では動きを考えるよりも気持ちを先行するのですが、舞台はその逆なので日々勉強です。
―下町・深川に住む腕利きの大工で博打にはまってしまう「銀次」は筒井さんとは正反対のイメージです。
演じてみていかがですか?
「銀次」は両親がいなくて、代わりに頼りにしていた人も死んでしまって独りになってしまいます。その上、不幸な出来事が起こってしまうことを考えると、博打にはまってしまうこともあり得るのかなと思います。辛い話ですよね。でも、誰もが人生の中で不幸なことはあるし、この作品はそれを乗り越えていく話しだと思っています。
―「銀次」とご自身とで似ていると思う部分はありますか?
最初に原作を読んだ時、すごく自分に近いと思いました。博打はしませんが、後はほぼ似ています。僕も子供の頃から朝早くに起きて武道の稽古をしていましたし、血だらけになった手を見て「もう稽古は嫌だ」と思いながら学校へ行きました。だから修行の辛さや、そこから得る物について理解できますし、若い時に心の隙を突かれたり、気持ちが揺れ動くということは理解できます。
―キックボクシングのチャンピオンだったお父様の影響で武道をされていたのですか?
そうです。自分からやりたかった訳ではなく親父にやらされていました。結果として良かったなと思いますが。
―江守徹さん、風間杜夫さん、池上季美子さんなど実力派の大先輩方との共演ですね
それについては必要以上に意識しないようにしています。まずは自分の役を完成させるのが先決で、作品全体のトーンに合わせるのはそれからだと考えていますから。僕の経験値は低いので周りに引っ張られすぎると中味がスカスカになってしまう。だから、まず自分が「こうです」というものを提示できるよう心がけています。
―先輩方に囲まれても特に緊張などはしないのですね
そうですね。緊張してもプラスにならないので、まず自分のやるべき事を優先して楽しく稽古し、本番に備えます。何だか真面目発言ばかりですが(笑)、これが楽なスタイルだということが分かってきたので、自分らしさを追求していこうと思います。
―どんなときに「俺って真面目だな」と思いますか?
こういうことを言っている時です(笑)。話している内容が真面目すぎるかもしれませんが、これが本当の僕のような気がします。自分に嘘をつかずに生きていきたいですし、真面目な大人であり続けたいですね。
―子供の頃に武道で厳しく特訓された影響でしょうか
それもあると思います。親の影響は確かですが、親にも良い部分、悪い部分がありますよね。悪い部分で言えば、「奇麗事を言っていても実際にしている事は違うじゃないか」という面もあります。その場合は反面教師として肝に銘じますし、「違うんじゃないか」と思ったことを提示して分かってもらえるように努力します。世の中にはズルをして生きている人が少なくないと思いますから、自分の仕事を通じて一人でも多くの人に真面目に生きていくことの大事さを分かってもらうことが遣り甲斐にも繋がります。自分もまだ勉強中ですが。
―今回の舞台は、下町人情や昔の義理人情、男同士の厚い友情がありますよね。舞台を通じて観客の方へ想いを訴えるわけですね
考えを押し付けるのは苦手なので、「そうかもな」という感じで軽く受け止めてもらえるようにサラリと演じられたらいいですね。演じている本人も素晴らしく、役者としても素晴らしいというのが理想なので、しっかりと自分を鍛えなくてはいけないと思っています。
―映画やドラマでも大活躍されていますが、特にここ近年は舞台に力を入れていらっしゃいますね
舞台に出させていただく機会は増えましたが、特別に力を入れているわけではありません。元は映画の世界から入っていますから舞台の方が苦手ですし。舞台役者の方々に囲まれて稽古している自分を客観的に見て、今回特に痛感しました。伝統ある明治座の舞台ということもあり今までに経験のないことが山積みで、自分らしさを模索中です。
―ファンの方は筒井さんらしさを求めて舞台を観にいらっしゃるのでしょうね
今までの自分らしさって、どういう形だったんでしょうね。今はまた次の段階に行きたいので、今までとは違うと感じていただけるのが作品として成功なのではないかと思っています。今後携わる作品全てにおいて、ひとつひとつ得るものをしっかりと得て、駄目な部分は調整して、次へ繋げていきたいと思います。